日常生活の中で、意見の食い違いや、時には小さな争いが起きてしまうことは誰にでもあります。
そんなとき、感情的になって相手とぶつかり合ってしまうと、思わぬ結果を招くことがあります。
日本の故事成語「漁夫の利(ぎょふのり)」は、まさにそんな争いの愚かさや、そこから生まれる意外な結末について教えてくれる言葉です。
この記事では、「漁夫の利」という言葉の詳しい意味や、どのようにして生まれたのかを、分かりやすく解説します。
また、似たような意味を持つ他の日本語や英語の表現と比べることで、このことわざが持つ日本ならではの視点も見ていきましょう。
そして、あなたのこころを整え、日々の人間関係をより円滑にするためのヒントもお伝えします。

アイちゃん!このケーキはエリカのだヨ!
エリカはもう食べたでしょ!?


このケーキ、よっつあった!アイちゃんも、千鶴も食べた。残ったケーキはエリカがもらう!
年上に譲りなさい。敬う心を忘れたらおしまいよ。


アイちゃんこそ childish!おとなげない!
そんな言葉どこで覚えたの!?

ケンカするなら、私がいただきます。


えっ!?
えっ!?

何か文句あります?

「漁夫の利」の意味と背景:争いから生まれる第三者の利益

この言葉は、二つのものが争っている間に、全く関係のない第三者がその争いのおかげで利益を得ることを意味します。
争いに関係のない人が得をするってことですね。


そんなぁ!Not fair!
「漁夫の利」の主な意味
「漁夫の利(ぎょふのり)」とは、「二つの勢力や個人が激しく争っている間に、全く関係のない第三者が、何もしないでその争いから利益を得てしまう」という意味の故事成語です。
争っている当事者たちが、お互いの利益だけを考えて争い続けた結果、両者ともに疲れ果てたり、損をしたりする中で、賢く立ち回った第三者が「棚ぼた式」に利益を得る状況を表します。
そこには、争いの無益さや、冷静な判断の重要性といった教訓が込められていますね。
感情的になると、周りが見えなくなるものですね。

う〜ん、耳が痛い話だなぁ。

「漁夫の利」の由来と成り立ち
この「漁夫の利」の言葉の由来は、中国の古い書物「戦国策(せんごくさく)」にある「蚌鷸(ぼういつ)の争い」という物語に由来します。
物語は次の通りです。
ある時、大きな貝(蚌:ぼう)が日光浴をしていると、そこへ鳥のシギ(鷸:いつ)が飛んできて、貝の身を食べようとしました。
貝は殻を閉じ、シギのくちばしを挟んで離しません。
シギは「今日雨が降らなければ明日も降らないだろう。そうすれば、お前はきっと干からびて死ぬだろう」と言いました。
貝は「今日シギのくちばしを放さなければ、明日も放さないだろう。そうすれば、お前はきっと飢え死にするだろう」と言い返しました。
二者が一歩も譲らず争い続けていると、そこへ漁夫が通りかかります。
争いに夢中になっている貝とシギを両方とも捕まえて、楽々と手に入れてしまった、という話です。
この逸話が、「争っている間に、関係ない人が利益を得る」という意味の故事成語として、日本にも広まりました。

You're kidding!貝も鳥もしゃべらないヨ!
エリカ。アイちゃんみたいなこと言わないの。

「漁夫の利」が持つ日常での意味合い
「漁夫の利」は、現代の私たちの人間関係や社会において、大切な教訓を与えてくれます。
個人間の小競り合いから、企業間の競争、あるいは国際的な対立まで、様々な場面でこの状況は起こり得ます。
感情に任せて争い続けることは、互いに消耗し、本来得るべき利益を失う可能性があると思いませんか?
冷静に状況を観察し、無益な争いからは距離を置くことが本当の賢さです。
争いの本質を見極め、自分にとって本当に価値のあるものは何かを考えるきっかけにしてください。
争いは何も生まないのよ。


うん。No good things.
「漁夫の利」と似た言葉
「漁夫の利」に似た意味を持つ日本語は他にもあります。
「漁夫の利」と似た言葉
- 犬猿の仲(けんえんのなか)
非常に仲が悪く、いつも争っている関係を指します。
「漁夫の利」が争いの「結果」としての第三者の利益に焦点を当てるのに対し、「犬猿の仲」は争いそのものの「状態」を表します。 - 共倒れ(ともだおれ)
争った結果、両者が共に損をしてしまい、破滅してしまうことです。
「漁夫の利」は「第三者の利益」があるのに対し、「共倒れ」は争いの当事者の「損失」に焦点を当てています。 - 骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
一生懸命努力したにもかかわらず、全く報われず、疲れるだけで終わってしまうこと。
こちらは当事者が損をする結果に焦点を当てますが、第三者の利益は考慮されていませんね。
似た言葉でも、ちょっとずつニュアンスが違うんだよ。上手に使い分けてね。

「漁夫の利」の使い方と例文
「漁夫の利」は、主に二者間の争いから第三者が利益を得た状況を説明する際に使われます。
「漁夫の利」の使い方
- 「兄弟で遺産相続を巡って激しく争った結果、弁護士ばかりが儲けて、まさに漁夫の利だった。」
- 「A社とB社が価格競争で泥沼の争いを続けたため、消耗した両社の隙を突いて、C社が市場シェアを拡大した。これは完全に漁夫の利だ。」
- 「二つの大国が貿易問題で対立している間に、別の小国が貿易を行い大きな利益を得た。まさに漁夫の利と言える状況だ。」
さらっと使えると賢く見えるわよ。


うん。今度使ってみるヨ!
アイちゃんの今から役立つポイント
「漁夫の利」は、二者間の争いが第三者の利益につながる状況を表します。
感情的な対立の無益さや、冷静な視点を持つことの重要性を教えてくれる言葉ですね。
「漁夫の利」と異文化の視点:争いの結果を伝える世界の言葉

「漁夫の利」は、動物を使った比喩と、争いに対する教訓的な視点を表しています。

英語では何て言えばいいのか?
「漁夫の利」に似た英語圏の表現
英語でも「漁夫の利」と似たニュアンスを持つ表現がいくつかあります。
「漁夫の利」と似た言葉
- When two dogs fight for a bone, a third runs away with it.
訳:二匹の犬が骨を奪い合って争うとき、三番目の犬がそれを持って逃げていく。
この表現は、「漁夫の利」と非常に近く、争いの結果として第三者が利益を得る状況を動物の比喩で表していますね。 - While two factions contend, a third wins.
訳:(二つの派閥が争っている間に、第三者が勝つ。
より一般的な対立状況で、第三者が利益を得ることを指します。 - Third party benefits.
訳:第三者の利益
これは慣用句と言うよりは、文字通りの意味での表現です。

Two dogs fight for a bone は似てるネ!
英語だと犬同士のケンカになるんだね。

「漁夫の利」と英語表現のニュアンスの違い
「漁夫の利」は、貝と鳥という具体的な生き物の争いと、それを冷静に利用する漁夫の姿を鮮やかに描き出していますね。
この具体的な比喩が、ことわざの情景を想像しやすく、教訓を強く印象付けています。
また、争いそのものへの皮肉や、そこから何を学ぶべきかという含みが強く込められていると言えます。
「漁夫の利」が持つ文化的な背景
「漁夫の利」の背景には、日本文化における「和を尊ぶ(わをたっとぶ)」という考え方や、不必要な争いを避けることへの価値観が見て取れます。
感情的な対立が、結局は誰も得をしない「共倒れ」や、第三者に利益を与える「漁夫の利」に繋がることを古くから認識していたのでしょう。
争いそのものを忌避し、調和を重んじる文化の中で、争いのリスクを警告し、冷静な判断を促すための教訓となっています。

アイちゃんは日本人なのに、すぐケンカする。
なんだと?

エリカのにほんごノート
「漁夫の利」は、争いの愚かさと第三者の利益を表現している。
日本の「和を尊ぶ」文化に根ざした、冷静な判断を促すことばです。
「漁夫の利」の心で日々を豊かに:こころを整えるヒント

「漁夫の利」の意味を掘り下げて考えていきましょう。
それを毎日に活かすことで、私たちの心は穏やかに整い、人間関係や社会生活をより円滑に進めることができるでしょう。
不必要な争いを避ける冷静な判断
私たちは、感情的になると、つい相手とぶつかってしまいがちです。
「漁夫の利」の教訓を思い出して、その争いが本当に自分にとって必要なものなのか、他に解決策はないのかを冷静に考えましょう。
一歩引いて状況を客観視し、短期的な感情に流されず、長期的な視点を持つことが重要です。
不必要な争いを避け、余計なエネルギーの消耗を防ぐことができますよ。
感情的になりそうになったら、まずは深呼吸ですよ。

Win-Winの関係を築くコミュニケーション
争いは、必ずしも悪いことばかりではありませんが、多くの場合、感情的な対立は双方に疲弊をもたらします。
「漁夫の利」を避けるためには、お互いの利益を尊重し、共に良い結果を生み出す「Win-Win」の関係を目指すコミュニケーションが重要です。
相手の意見にも耳を傾け、共通の目標を見つける努力をすることで、対立ではなく協力の道を探ることができます。
アイちゃんはいつも「Win-Win」の関係を意識してるよ。

第三者の視点から状況を分析する力
もしあなたが誰かの争いに巻き込まれそうになった時、あるいは二者が対立している状況を目にした時、「漁夫の利」の視点から状況を分析してみましょう。
争いの本質は何か、誰が本当に利益を得るのか、といったことを冷静に考えることが重要です。
感情に流されず、最も賢明な行動を選ぶことに意識を向けましょう。
時には、傍観者になり、不必要な争いには関わらないという判断も大切です。
遠くから自分を見てみる視点を持つと良いですよ。

千鶴のこころを整えるヒント
「漁夫の利」の教訓は、感情的な争いを避け、冷静に状況を判断し、協力的な関係を築くことの重要性を教えてくれます。
第三者の視点を持つことで、心穏やかに、賢く日々の困難に対処できるようになるでしょう。
まとめ:「漁夫の利」を教訓に、心穏やかな日常を


アイちゃんのせいで、千鶴にケーキを食べられた!
アイちゃんからしたら、エリカのせいだからね。

仲良く二人で半分にするなら、私は譲ってあげたのに。

今回は、日本の故事成語「漁夫の利」について、その意味や背景、そして心を整えるためにどのような考え方をすれば良いのかをご紹介しました。
日常生活やビジネス、社会情勢など、様々な場面で「漁夫の利」の状況は起こり得ます。
感情に流されて争い、互いに消耗してしまう前に、このことわざが持つ教訓を思い出してみてください。
争いを避け、冷静な判断力を養い、協力的な姿勢を持つことで、不必要な対立から生まれる「漁夫の利」を防ぎ、より心穏やかで豊かな日常を築くことができるはずです。
今日からぜひ、「漁夫の利」を教訓として、あなたの行動や人間関係に活かしてみてはいかがでしょうか。